事業承継への第一歩 第2弾『親族内承継の成功を目指して』
目次
こんにちは、ブロードリーフの楠本です。前回は「事業承継への第一歩」として、ファミリービジネスの魅力や課題についてお話ししました。今回は、事業承継の選択肢のひとつである 親族内承継 をテーマに、課題とその対策について一緒に考えてみましょう。
経営者引退に伴う経営資源引継ぎの概念図

親族内承継の現状と課題
中小企業庁の調査によると、事業承継が必要な企業の約6割が親族内承継を希望しているそうです。ただ、実際には以下のような課題があり、多くの経営者が難しさを感じています。
1. 後継者の育成不足
後継者が十分な経営スキルを持たないまま承継すると、事業の安定性が損なわれることがあります。例えば、経営計画の立て方や従業員管理、財務の知識など、経営者として必要なスキルは多岐にわたります。これらを計画的に学べる環境を整えることが重要です。
2. 家族間の対立
「誰が事業を継ぐのか」「公平な承継になっているのか」といった点で家族間の意見が食い違うことがあります。特に、後継者候補が複数いる場合や、感情的なすれ違いがあると、計画が進まなくなることも少なくありません。
3. 属人的な経営
経営者自身のカリスマ性やスキルに依存している場合、後継者にとってその重荷が大きく感じられることがあります。こうした経営スタイルを改善せずに引き継ぐと、顧客離れや業績の低下を引き起こすリスクがあります。
4. 財務的な負担
親族内承継では、相続税や株式移転に伴う費用が負担となるケースがあります。特に、相続税が高額になる場合は、資金面での準備が承継を成功させるための重要なポイントになります。
属人的な経営が引き起こす問題
中でも、「属人的な経営」は多くの企業で共通する課題です。一代で事業を成功させた経営者は、卓越した営業力やノウハウを持つことが多いですが、それらが「自分には当たり前」と感じられている場合、後継者に共有されないことがあります。その結果、後継者がスキルや知識を引き継げず、事業の継続が難しくなるリスクが高まります。
自動車整備工場における属人的な経営への対策
親族内承継を成功させるには、属人的な経営を解消し、組織全体でカバーできる体制を作ることが大切です。以下は、自動車整備工場でよく見られる課題に対する具体的な対策です。
対策1: 事業承継に向けた計画の立案
「承継はまだ先の話」と考えていても、準備が遅れるとスムーズに進められなくなります。承継には平均して5年以上の時間が必要とされており、後継者の育成や財務の整理、顧客の引き継ぎを計画的に進めることが重要です。
- 具体例
- ●後継者が経営を学ぶための研修やセミナーに参加。
- ●承継計画を文書化し、スケジュールを明確にして家族や従業員と共有。
対策2: ノウハウの形式知化と共有
整備技術や作業手順が属人的なものになりがちです。これを解消するため、作業手順や業務フローをマニュアル化し、全員で共有することが必要です。
- 具体例
- ●写真や動画を使って作業マニュアルを作成。
- ●定期的に従業員研修を行い、スキルを全体で平準化。
- ●事業承継の機会を活かして、業務のデジタル化を進める。
対策3: 顧客関係の共有
現経営者が築いた顧客との信頼関係を引き継ぐには、後継者自身が顧客と直接接する機会を作ることが重要です。
- 具体例
- ●後継者が経営者と一緒に主要顧客を訪問し、顔を知ってもらう。
- ●CRM(顧客管理システム)を導入し、顧客情報をデータベース化して全員がアクセス可能にする。
親族内承継を成功させるポイント
親族内承継では、後継者が肉親であるために「分かり合えている」という思い込みから、コミュニケーションが不足しがちです。これを防ぐには、以下のポイントを意識しましょう。
- 1. 家族間の対話を大切にする
- 計画を立てる段階で家族全員が参加するミーティングを定期的に開き、意見を交換する機会を増やしましょう。
- 2. 外部支援を活用する
- 中小企業診断士や税理士、弁護士などの専門家に相談することで、客観的なアドバイスが得られ、計画の精度が上がります。
- 3. 具体的な計画を立てる
- 曖昧な計画ではなく、何をいつまでに行うのかを明確にし、スケジュールをしっかり管理しましょう。
結論
属人的な経営を解消し、親族内承継を成功させるには、計画的な準備と家族全員の協力が必要です。特に、コミュニケーションをしっかり取ることで、課題の解決がスムーズになります。
また、事業承継には専門知識が求められるため、外部の専門家の力を借りることを検討しましょう。外部アドバイスを取り入れることで、安心して次世代への引き継ぎを進めることができます。
次回予告
次回は「親族外承継」の「従業員継承」についてお話しします。親族内承継が難しい場合、従業員や第三者への承継が選択肢となります。具体的なメリットや課題、成功事例を交えながら、従業員承継をスムーズに進めるポイントを解説します。お楽しみに!