レバレート見直しで未来を切り開く!

レバレート見直しで未来を切り開く!

人手不足、働き方改革、そして物価高騰…。 車の整備業界を取り巻く環境は、厳しさを増すばかりです。

そんな中、多くの整備工場が頭を悩ませているのが「値上げ」の問題。
「周りの工場も値上げしていないし…」「お客様に嫌われたらどうしよう…」
様々な不安を抱え、値上げに踏み切れない工場が多いのが現状です。

しかし、本当に値上げは「悪」なのでしょうか?

今回は、レバレート値上げ問題の核心と、整備工場が未来を切り開くためのヒントになればと記事を作成しています。

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  1. なぜ今、整備工場は値上げが必要なのか?
  2. 多くの整備工場が値上げできない「本当の理由」とは?
  3. ディーラーと整備工場の現状比較から見える、驚くべき事実とは?
  4. 値上げを成功させるために、整備工場ができることとは?

なぜ今、整備工場は値上げが必要なのか?

1.「適正な利益を確保するため」 の値上げ

整備工場が値上げを検討すべき理由は、 「適正な利益を確保するため」 だと言えます。
適正な利益の確保は、企業にとって「お客様に安全な車を提供し続ける」ためにも、そして「従業員とその家族の生活を守る」ためにも、決して避けては通れない課題です。

2.高騰するコストに価格が見合っていない現状

電気代、ガス代、水道代などの光熱費の高騰に加え、部品価格も上昇を続けています。
さらに、人材不足も深刻化しており、従業員の給料を上げなければ優秀な人材を確保することはできません。
こうしたコスト増加分の負担を、整備工場だけで抱え込み続けることは、限界に近づいています。

3.値上げは事業継続のための「必要な選択」

こうした状況下で、値上げを行わずに現状維持を図ろうとすると、どうなるでしょうか?

考えられるのは、従業員の給与カットや設備投資の縮小、そして最終的には事業の縮小・廃業です。そうなれば、お客様にとっても、これまで通りのサービスを受けられなくなるなど、不利益が生じる可能性があります。

値上げは、決して「お客様に負担を強いる行為」ではありません。

むしろ、整備工場が事業を継続し、従業員を守り、お客様に質の高いサービスを提供し続けるために必要な選択なのです。

多くの整備工場が値上げできない「本当の理由」とは? 3つの要因を深掘り解説

値上げの必要性を理解していても、なかなか踏み出せない整備工場が多いのはなぜでしょうか?

1. 心理的なハードルの高さ

ある老舗の整備工場様で「値上げ交渉をした経験がない」といった声をお伺いしたことがあります。長年、価格競争の激化や、ディーラーに整備をお任せする方が増えた影響もあり、「値上げ=悪」という意識が根強く残っている整備工場は少なくありません。

そのため、お客様に値上げを伝えることに対して、心理的な抵抗感を抱いてしまう工場が多いようです。

また一方で、価格が安いことを売りにしている工場の場合、値上げによってお客様が離れてしまうことを懸念する声が聞かれます。

長年、地域密着で営業してきた工場であればなおさら、顧客との関係性が損なわれることを恐れるのは当然と言えるでしょう。

周りの工場が値上げしていないため、足並みを揃えたい。
同業他社の動向を気にして、値上げに踏み切れないケースも散見されます。

横並びの意識が強い業界だからこそ、周りの工場が値上げしない限り、自社だけが値上げするのは難しいと感じるのは無理もないことかもしれません。

2. レバレート計算の知識不足

適正な料金設定に必要な、レバレート計算の方法を知らないといったケースも散見されます。レバレートとは、1時間あたりの作業料金のことですが、適正なレバレートを設定することで、初めて適正な工賃を算出することができます。

しかし、レバレート計算の知識がない、あるいは計算方法が曖昧なまま料金設定を行っている工場も少なくありません。

原価意識が低く、現状の料金設定が適正かどうか判断できない

人件費や光熱費などの原価を正確に把握できていない場合、現状の料金設定が適正かどうかを判断することはできません。

そのため、値上げの必要性を感じながらも、具体的な根拠を示すことができず、行動に移せないという状況に陥ってしまいがちです。

一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(略称:日整連)にて公開されているレバレート計算シートも合わせてご確認ください。
https://www.jaspa.or.jp/member/introduction/laborrate.html

3. 将来への不安

近年、車の電動化や自動運転化が進み、整備内容も複雑化しています。

こうした変化に対応していくためには、設備投資や人材育成が不可欠ですが、将来に対する不安から、積極的な投資に踏み切れない工場も少なくありません。
業界全体の先行きに不安を感じ、設備投資や人材育成に積極的になれない。といった声をお伺いすることが増えてきているように感じます。

少子高齢化や車離れといった社会構造の変化により、整備業界全体の将来を悲観的に捉えている経営者もいます。

将来に対する展望が描けない状況では、設備投資や人材育成といった長期的な視点が必要な取り組みに対して、二の足を踏んでしまうのも無理はありません。

ディーラーと整備工場の現状比較から見える、驚くべき事実とは? データで明らかになる現実

「ディーラーが高いのは当たり前。うちは町の整備工場だから…」
そう考えている方も多いかもしれません。

しかし、 「ディーラーと整備工場の現状を比較することで、見えてくるものがある」 と言えます。

データで見るディーラーと整備工場の格差

例えば、最新の整備白書によると、レバレートの中心レンジはディーラーで9,000円以上であるのに対し、専業工場では7,000円にとどまっていることが分かります。

また、ディーラーは車検基本料金や整備メニューの単価を積極的に値上げすることで、売上を維持・拡大させている一方、整備工場は値上げに消極的なため、売上は横ばいの状態が続いています。

さらに、ディーラーは働き方改革の影響で残業時間が減っているため、整備需要の一部が整備工場に流れてきているという現状もあります。

これらの事実から見えてくるのは、ディーラーは時代の変化を敏感に捉え、戦略的に価格設定や事業運営を行っているのに対し、整備工場は過去の成功体験に縛られ、変化を恐れ、現状維持に甘んじているという現状です。

参考までに、整備専業・兼業工場とディーラーの1事業場(工場)あたりの整備売上を比較しました。ディーラーは2021年より年間3%超で上昇し続けています。

1事業(工場)数あたりの整備売上高のグラフ
※出典: (一社)日本自動車整備振興会連合会 令和5年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要についてより弊社にてグラフ化https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R05jittaityousa.pdf

設備や人への投資を進めて”価値”を高める

ディーラーは、メーカーの厳しい基準をクリアした設備や人材を揃え、お客様に安心・安全を提供しています。また、最新の技術や情報にも精通しており、質の高い整備を提供できる体制を整えているのです。

その結果として、お客様はディーラーのサービスに価値を感じ、高い料金を支払ってでもディーラーを選び続けているのです。つまり、ディーラーだから高いのではなく、ディーラーは提供する価値に見合った価格設定をしているだけなのです。

整備工場も、ディーラーに負けない技術力やサービスを提供することで、適正な価格で顧客に選ばれる存在を目指していく必要があります。

ディーラーだから高いのではない。価値に見合った価格設定をしているだけとも言えます。

値上げを成功させるために、整備工場ができることとは? 具体的なステップと成功事例を紹介

では、整備工場はどのように値上げを進めていけば良いのでしょうか?
代表的なポイントを3つにまとめました。

1. 現状把握と目標設定

まずは現状のレバレートを計算し、適正な料金設定を把握することが第一歩となります。
自社の原価構造を分析し、適正なレバレートを算出しましょう。その上で、同業他社の料金設定も参考にしながら、自社の料金設定を見直していくことが重要です。

また、原価だけではなく、将来の事業計画や目標利益を明確にし、必要な売上目標を設定することが非常に重要となります。「どんな工場を目指したいのか」「従業員にどれだけの給与を支払いたいのか」といった将来像を明確化し、その実現に必要な売上目標を設定しましょう。

具体的な目標を設定することで、値上げの必要性や値上げ幅を算出しやすくなります。

2. お客様への丁寧な説明

なぜ値上げが必要なのか、お客様に分かりやすく説明する(価値を訴求する)ことが非常に重要となります。ここでは、値上げによってお客様にどのようなメリットがあるのかを伝えることが重要です。

例えば、「値上げによって、より質の高いサービスを提供できるようになる」「最新の設備を導入することで、より安全な整備を提供できる」といったように、お客様にとってのメリットを具体的に説明することで、値上げに対する理解と納得を得やすくなります。

近年では、OSS検査にかかるスキャンツールの対応や、エーミング対応による新たな設備投資が必須となっており、カーオーナーも自動車が高度化していることについては理解を頂けていると言えます。そうした観点から、「自動車の安心安全のため」の設備投資として、必要な作業代金ならびに、レバレート全体の見直しが必要と言えます。

顧客への理解を促すのと同時に、サービスの質向上にも取り組むことが重要です。

例えば、待ち時間の短縮、整備内容の説明の充実、顧客対応の向上など、顧客満足度を高めるための取り組みを積極的に行いましょう。「前に来た時よりも良かった」という印象・イメージを持っていただくことが何よりも重要と言えます。

そのためには、日頃からお客様とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を構築しておくことが大切です。値上げの前に、お客様の声に耳を傾け、要望や不安を把握しておくことで、値上げに対する理解を得やすくなります。

3. 将来への投資

最新の設備投資や人材育成を行い、お客様に選ばれる工場を目指すことが必須です。値上げにより得た収益は、必ず将来への投資が必須であり、これがままならないと、お客様は離れていってしまいます。

最新の設備投資や人材育成のため、積極的に投資を行い、お客様に選ばれる工場を目指しましょう。

近年、車の電動化や自動運転化が進んでおり、従来の整備技術だけでは対応できないケースも増えています(電動化による工場の絶縁化への対応など)。時代の変化に対応できる体制・設備を整えることが重要です。

整備業界全体が抱える課題を、他人事ではなく、自分事として捉え、業界全体の未来を創造していくという気概を持つことが大切です。

まとめ| 値上げは、お客様との信頼関係の上に成り立つ

値上げは、お客様との信頼関係の上に成り立つものです。お客様に値上げを受け入れてもらうためには、値上げの必要性や、値上げによってお客様にどのようなメリットがあるのかを、丁寧に説明することが重要です。

その上で、お客様に「この工場に頼んでよかった」と思ってもらえるような、質の高いサービスを提供し続けることが、値上げを成功させる最大の秘訣と言えるでしょう。

整備工場は、日本の自動車社会を支える重要な存在です。現状を打破し、未来を切り開くための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?


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