メカニックなら気持ちがわかる⁈スムーズなOBD検査準備ガイド

はじめに

この記事では、OBD検査がもたらす具体的なメリットや導入に際しての技術的課題、そして実際に検査を行う現場での知識共有の重要性について詳しく解説します。記事を読んだのち、皆さんがOBD検査に対する理解を深め、自社での導入や展開をスムーズに進めるためのヒントを得ていただきたいと考えています。
 また、この知識を社内で共有していただき、適切な準備を行うことで、顧客に対して付加価値の高いサービスの提供、顧客満足度の向上だけでなく、業務効率化や売上の拡大といった目に見える成果を実現する一助になれば幸いです。

OBD検査導入で車検はどう変わる?

2024年10月1日より、自動車の車検においてOBD検査が義務化されます。これは、従来の目視検査に加えて、電子制御装置の診断をスキャンツールを用いて行うという、車検における大きな変化と言えます。

これまで目視で確認できていた点検項目、例えばチェックランプやMIL、配線関係などをOBD検査では特定DTCの有無をスキャンして確認することになります。

こちらのリンクから「今さら聞けないOBDセミナー」をご用意していますので、おさらいや貴社内での学習にご活用ください。

これは、従来の「点検項目」とは異なります。より明確な「”法令”に基づく整備=”必要不可欠な”整備」として明確な根拠に基づいて納得、理解を促すことができます。

さらに、フルスキャンによって特定DTC以外の故障コードが検出された場合には、整備工場としては顧客にその内容を説明し、追加整備提案や予防整備を行う必要性も出てきます。

これに伴い、整備工場はOBD検査に対応できる環境構築はもちろん、特定DTCを読み取れるスキャンツールの導入だけでなく、スキャンツールの操作方法や通信環境の整備、特定DTC照会アプリのバージョンアップ対応など、新たな知識やスキルの習得が求められることになります。さらに、OBD検査に関する法改正や運用方法など、常に最新の情報収集を行うことも必要です。

OBD検査導入は、整備工場にとって大きな変化ではありますが、あらかじめ事前準備をしっかりと行うことで、スムーズな運用体制構築を実現することも可能です。

OBD検査に向けて”事前準備”が重要

OBD検査導入にあたって事前準備を怠ると、車検業務に様々な支障をきたし、整備工場にとって大きな損失につながる可能性があります。

まず、スキャンツールの操作に不慣れな場合には、検査時間が長くなってしまいます。

例えば、スキャンツールと車両の接続するためのDLC(データリンクコネクタ、OBDポート)の位置が分かりにくかったり、故障コードの読み取りや消去方法に手間取ったりすると顧客を長時間待たせてしまい、顧客満足度の低下につながります。

また、OBD検査に関する知識不足は、検査未実施や誤判定によって監査時に減点対象となるリスクを高めます。特定DTC以外の故障コードを見逃して車検を通してしまうと、運転者の安心・安全に影響を及ぼす可能性もあります。また、通信環境の障害などにより正しく検査できない場合も、その原因を特定するなどの特殊な対応が必要になることがあります。

さらに、法改正による検査の変更内容を把握していないと、気付かないうちに不正な検査を行ってしまうリスクにもなり得ます。検査員資格のない者が検査を行う「なりすまし検査」や、特例措置の要件を満たしていないのに目視検査のみで車検を通してしまうなどは、法律違反となり、行政処分を受ける可能性が高まります。

そして、OBD検査の料金設定と説明が適切でないと、顧客とのトラブルに発展する可能性もあります。他の整備工場ではOBD検査費用を請求しているのに、費用を請求せずに車検を実施することで不正な検査をしているのではないかと思われたり、逆に特に詳しい説明がなく高額な費用を請求したりすると、顧客に不信感を与えクレームにつながることも考えられます。

OBD検査導入によるこれらのリスクを回避し、スムーズな車検業務を実現するためには、事前準備を入念に行うことが重要です。

OBD検査をスムーズに導入するために

2024年10月からのOBD検査本格運用開始に向けて、多くの整備工場が対応準備を進めています。スムーズな検査実施のためには、①機器・システムの導入、②検査手順の理解、③スタッフの知識・スキル向上、④検査体制の整備という4つのポイントを押さえることが重要です。

①必要な機器・システムを導入する

まずは、OBD検査に必要な機器・システムを導入しましょう。検査対象となる車両の特定DTCコードを読み取れるスキャンツールが必須です。整備用スキャンツールを兼ねた高価なものから、特定DTC読み取り専用の安価なものまで様々な種類があります。予算やメインで入庫する車両や貴社の工場運営に合わせて適切なものを選びましょう。

その他、検査用コンピュータやインターネット回線、スキャンツールメーカーの定める通信ケーブルも必要です。特に通信ケーブルは、車両とVCIの接続にメーカー指定以外のケーブルを使用すると、検査結果に影響が出る可能性があるため注意が必要です。

②検査手順を理解する

OBD検査の手順をしっかりと理解しておくことも重要です。車種によってDLCの位置が異なるため、事前に確認しておきましょう。スキャンツールとコンピュータを接続し、特定DTC照会アプリを起動したら、車検証情報を二次元コードリーダやICタグリーダにて車検証を読み取ります。さらに、検査はエンジンをかけたままで実施する必要があります。エンジン停止状態では、必要なデータが取得できない場合があるからです。特に、ハイブリッド車はエンジンで発電を行っている状態で検査を行わなければならなかったり、その他のアイドリングストップ使用者は機能をOFFにして検査を行わなければなりません。イグニッションON状態のままだと日射センサーやエアコン関連の機能が作動しているだけで、特定のPコードを検出する可能性があるため注意が必要です。

③スタッフの知識・スキルを向上させる

検査員やメカニックだけでなく、フロントスタッフや営業担当者も含め、OBD検査に関する知識・スキルを向上させる必要があります。

故障診断事例集などを用いた社内勉強会も効果的です。経験豊富なメカニックが、若手メカニックにノウハウや傾向データを伝授することで、検査品質の向上に繋がります。さらに、高齢者や車の知識が少ない顧客に対して、車検証アプリの活用方法などを説明できるように、顧客対応についても検討しておく必要があります。

フロントスタッフも電話でヒアリングを行うだけでなく、車検証閲覧アプリから車検証情報をPDFで店舗の公式LINEに送ってもらうなどの運用も検査品質を高めるための準備として考えられます。

④検査体制を整備する

最後に、OBD検査に対応するための体制を整備しましょう。実務にあたる責任者を決め、検査手順書を作成し、検査結果の記録方法やトラブル発生時の対応フローを予め想定して決めておくことが重要な準備になります。

スタッフの成長を加速させる!自ら行動するための社内勉強会

OBD検査に関する知識習得は、スムーズな検査実施の第一歩です。あまり費用をかけずに知識を習得する方法として、社内勉強会の実施も有効です。

OBD検査ポータルサイトやOBD準備会合サイトを活用すれば、法改正情報やFAQ、事例集、Q&Aなど、OBD検査に関する様々な情報を入手できます。

故障診断事例集などを用いたロールプレイング形式の研修も効果的です。特定の車種やエンジンで発生しやすい故障コードを題材に、検査手順や顧客対応をフロントスタッフもメカニックも巻き込んでシミュレーションすることで、適切な説明をするためのスキルを身につけることができます。

こうした勉強会の結果、メカニックとフロントスタッフが連携し、カーオーナーに対して「予防的な整備を行いましょう」とOBD検査の結果を目にみえるようにOBD検査結果帳票を用意して説明し整備の価値を理解を促ことで、次回の点検や整備の依頼につなげることができます。

上記のように、社内勉強会を若手メカニックが中心となり新たな知識を習得しつつ、経験豊富なメカニックが指導、故障診断や顧客説明の練習を行うことで、検査品質の向上にも繋がります。また、各メカニックが持つ知識や経験を共有することも重要です。特定のメーカーや車種でよく見られる故障事例や、その対応策について情報交換を行うことで、組織全体のレベルアップを図ることができます。

まとめ:OBD検査対応で整備工場はどう変わる?

OBD検査への対応は、多くの整備工場にとって負担が大きいと感じるかもしれません。しかし、適切な準備と取り組みによって、OBD検査は整備工場の未来を大きく変える可能性を秘めているのです。

まず、OBD検査をスムーズに実施できるようになれば、前述しました検査未実施や誤判定による監査時の指摘リスクが減少します。特定DTC以外の故障コードも検出することで、潜在的な不具合を発見し、安心・安全に関わる不具合を未然に防ぐことが可能になります。これは、整備工場の信頼性向上にも繋がる重要なポイントです。

さらに、OBD検査費用を適切に設定することで、新たな収益源を確保することもできます。OBD検査の料金体系を明確化し、顧客に分かりやすくOBD検査結果帳票を利用して説明することで、理解と納得を得ながら収益を上げることが可能になります。

そのためには、メカニックのスキルアップが何よりも重要です。診断機を使いこなすスキルや、電子制御装置に関する知識が向上することで、より高度な整備が可能となり、整備品質の向上に貢献し、ひいては顧客満足度向上に繋がるといえます。ただ、これらの対応を丁寧に実践していくことにより、他社との差別化、競争力強化にも繋がる大きなメリットと言えるでしょう。

最後に

自動車業界はOBD検査だけでなく、昨今の度重なるメーカー、ディーラーならびに街の整備工場の不祥事が取りざたされ、変化や新しい規制への対応を余儀なくされています。

直接顧客の安心・安全にかかわる整備を行うメカニックの皆さんはもちろんその渦中にさらされますので、より一層の注意が必要です。

現場に任せきりになってしまっている経営層の方々も、何かあったときはメカニックだけの責任ではなく、事業所単位の責任になってしまうので、OBD検査を皮切りにメカニックとの連携を強化する必要があります。

この記事を読んだ後は、ぜひ次のステップとして、OBD検査の実施に向けた準備に取り掛かってください。

OBD検査「利用者管理システム操作マニュアル」徹底ガイド 設定編

上記、動画ではOBD検査システムへの登録、自社の環境設定、特定DTC照会アプリのダウンロードとインストールなどを、「OBD検査ポータルサイト」で公開されているマニュアルを元にツカサ自動車工業の佐藤社長と弊社高田が徹底解説しています。

また、ご自身で設定をすべて行うのは自信がない、OBD検査に対応する2台目のパソコンも設定したいという方には、弊社のユーザー様限定で「OBD検査設定支援サービス」もご用意しています。

設定支援サービス(ブロードリーフユーザーサイト:BLNavi)

技術の進化に伴い、整備業界が直面する課題は増加し続けていますが、それと同時に、新しいビジネスチャンスも生まれています。OBD検査は、まさにそのチャンスを掴むための一つの鍵になる可能性があります。

技術は日々進化しており、最新情報に追いつくことが成功のカギです。当サイトでは、OBD検査に関する最新の動向や技術情報を定期的に更新しています。今後のアップデートもお見逃しなく!


資料請求は電話0120−47−2610でも受付しております。

(営業時間 平日9:00〜17:30)