なりすましOBD 行政処分や検査員解任!?自社内のID・パスワードの使いまわしでシステム停止
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2024年10月以降より本運用されるOBD検査ですが、国土交通省より”OBD検査システムに関わる新設・改正予定の通達について”の概要が発表されました。
参考資料
国土交通省 新設・改正予定の通達について(概要)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001715212.pdf
コンプライアンスへの意識が高まる中、OBD検査ではOBD検査システムの利用に必要なログインIDやパスワードの不正使用による「なりすまし」行為が、新たなリスクとして浮上しています。たとえ、同じ事業所内であったとしても“なりすまし申請”に該当してしまう行為を行うことで、行政処分やOBD検査システムが停止されてしまう可能性があります。
OBD検査は、自動ブレーキや車線逸脱防止装置等の自動車の高度化を背景として、車載式自己診断装置(OBD)を利用して電子制御装置等の異常がないかを確認・検査するために実施されます。
具体的には、下記3点のシステム・アプリを使用してインターネット経由でOBD検査用サーバーに接続して特定の故障コード検出の有無を確認・検査します。
・利用者管理システム
・特定DTC照会アプリ
・OBD検査結果参照システム
さらに、これらシステムの安全性を確保するために特定のID・パスワードによるログインが必要になります。事業場管理責任者や検査員だけがシステムにログインすることで、無資格者が保安基準適合証を発行できないようにするためのセキュリティ管理の一環で行われているはずです。
しかし、上述したように事業所内での不正ログインのリスクが10月以降の本運用に向けて懸念されています。自動車の高度化に伴って、自動車の整備や検査も高度化してきています。しかし、自動車整備業界に従事している方々の中では、パソコンで検査結果の打ち込みや管理を行うことに対して苦手意識を持っている方もいらっしゃいます。
OBD検査やOSS申請、記録事務代行制度など、自動車検査に関わる業務が電子化されようとしていて、「正直ついていけない」と「今更パソコンは覚えられない」、「パソコンが得意な人に任せたい」、「代行してほしい」と思っていても、決して無資格者の方に任せてはいけません。
なぜなら、同じ事業場内であっても無資格者が検査業務を検査員に代わって行うことで、技術的な不備・安全上の問題を抱えた自動車が市場に出てしまうリスクとなります。したがって、不正車検と同様に自動車の安心・安全を脅かす危険があることも考えられます。
今回の国土交通省の発表では、無資格者がOBD検査システムにログインして「なりすまし申請」が行われないように、ID等の管理ルールと違反措置が通達されました。
ID等の管理ルール
※注意
具体的な管理については、機構の定める利用規約に従って適切な管理を行ってください。
今回の通達の目的はOBD検査システム不正利用の防止が目的ですので、不正使用行為に該当してしまう場合、行政処分だけでなくOBD検査システムへのログインID 等の効力停止の可能性が言及されています。
OBD検査ポータル:https://www.obd.naltec.go.jp/
ここで、ID等の不正使用行為にあたるケースを確認しておきましょう。
①他者のログインID等を利用してOBD検査またはOBD確認を実施。
この行為は、「なりすまし」に該当する可能性があります。
②事業場ID等を事業場以外の者へ貸し渡し、使用させた。
この行為は、「ID等の不正使用のほう助」に該当する可能性があります。
どちらの行為も先述したようにOBD検査システムを覚えられない、ついていけないとした検査員の方が、無資格の他従業員にログインIDを使用させてしまうケースで違反行為に該当してしまうことになります。
ID等を無資格者に使わせてしまうことで、なりすましとなりすましのほう助となってしまいます。
ほかにも、検査業務においてなりすまし行為となってしまう「検査補助」についても、補助行為として認められている範囲内の行為は何なのかしっかりと確認し、検査員だけだなく補助行為を行うほかのメカニックやスタッフが正しく把握できている状態にしましょう。
出典
自動車特定整備事業者等におけるOBD検査及びOBD確認の取扱方針について
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001761202.pdf
検査対象車両へのVCIの取り付け及び特定DTC照会アプリへの車両情報の入力は、補助者が行って差し支えない。ただし、検査対象車両との同一性の確認、特定DTC照会アプリへの車両情報の入力の真正性については、自動車検査員が責任をもって確認すること。
事業継続に与える影響
さらに、今回の通達では検討中ではありますが、指定自動車整備事業に係る行政処分の対象となる行為及び処分規定も示されています。
なりすまし行為や不適合状態で虚偽のデータにてOBD検査を実施し適合証を交付してしまった場合、指定整備事業者は違反が認められた台数あたり、10点の違反点数が課されてしまいます。
違反点数は、認証の取消には180点、指定の取消には360点を累積点としますので、決して低くない違反点数です。加えて、認証工場では違反点数10点以上、指定工場では20点以上で事業停止命令となります。
※指定整備事業者の処分検討例ですが、認証工場の事業停止基準もあえて記載しています。
検査員がなりすまし行為や不適合状態で虚偽のデータにてOBD検査を実施し適合証に証明してしまった場合は、検査員当人に対する解任命令が発せられてしまいます。
このように、事業停止によって指定期間の売上が立てられないだけでなく、検査員が解任されてしまうことで事業継続に大きな影響が出てしまうことが考えられます。
OBD検査の本運用までまだ時間があるからとはいえ、万が一にでも監査で違反が発覚してしまうと前述したようにOBD検査システムへのログインID等の効力停止だけでなく、行政処分の対象となってしまう可能性がありますので、早めに準備して対策しておくことが大切です。
最後に…
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ツカサ工業株式会社 代表取締役 佐藤 謙治 氏
株式会社バンザイ 営業企画開発部 商品開発課 課長 海老原 康輔 氏
株式会社ブロードリーフ クラウド戦略推進部 高田 芳弘
以上3名を講師にむかえ、実車を使用したOBD検査の様子とOBD検査に関する2023年12月時点の最新情報をお伝えします。